半導体ウエハってなに?
半導体ウエハって聞いたことありますか?
半導体が我々の身近な電子機器などに搭載され、生活を支える大きな役割を果たしていることはなんとなくイメージがわくかもしれません。それでは、半導体はどのようにしてつくられているのでしょうか?この答えは、「半導体ウエハ」の話抜きには語ることができません。
【半導体はどのようにつくられる?】
スマートフォンやPCを分解してみると、四角くて薄い形状の黒いチップを見つけることができます。これがIC(Integrated Circuit)とばれる、俗にいう「半導体」です。
このチップ、実は超微細加工によりつくられた電子回路を黒色の樹脂で封止した構造になっており、物理的に「半導体」と呼んでいいのは内部の電子回路の部分です。
ちなみに樹脂で覆われている理由として、大気中の異物や水分から守ること、振動や衝撃から守ること、光や電磁気による誤作動を防ぐことが挙げられます。超微細加工された半導体をむき出しの状態にしておくことは現実的ではないんですね。
樹脂の中身は先述のように、超微細加工によりつくられた電子回路であり、純度の高いシリコンなどの半導体材料を加工して電子回路を形成されます。また大判の半導体材料を使用し、複数の電子回路を形成、切断することで一度に多くのICチップの製造を可能としています。
そして実はこのICチップは切断される前、円盤状になっているんです。この円盤状にできた半導体材料のことを「半導体ウエハ」と呼びます。
【半導体ウエハが円盤状である理由】
なぜ四角ではなく円盤型なのだろう、と思った方も多いと思います。
一枚のウエハから生成されるそれぞれのICチップの特性は、大きな特性のばらつきは許されません。ウエハの中心部にあったICチップは5Vの電圧を出力するのに、端っこのほうで生成されたウエハは4.5Vの電圧を出力する、なんてことが起きたら製品の信頼性にかかわりますよね。
多少の特性ばらつきは許容されるように電子回路は設計されますが、基本的にはそのようなことが起きないよう半導体ウエハを製造しなければなりません。
半導体ウエハが円盤状である理由は、こういった問題を解消するためです。
例えばシリコンを半導体材料としたウエハ(=シリコンウエハ)の場合、ウエハ上に規則正しい配列をしたシリコン結晶(=単結晶シリコン)を生成する必要があります。
これを実現するためには、現在の技術では回転・引き上げといった製造過程を採用する必要があり、円盤状にならざるを得ないのです。端っこのICチップがなんだかもったいないですよね。
余談ですが、格子模様の入った型で挟み薄く焼いた洋菓子、「ウエハース」と似ていることから名づけられたそうですよ。
【まとめ】
ICチップが切断される前の、円盤状のシリコンを半導体ウエハと呼ぶ。各ICチップが大きな特性ばらつきを持たないための製造上の理由により、円盤状の構造となっている。
量子コンピュータって何だろう?
量子コンピュータって言葉、聞いたことありますか?
実は従来のコンピュータとは全く異なる仕組みで、計算の高速処理を可能とし、あらゆる分野で期待されています。
今回はその仕組みと今後について解説していきます。
【従来のコンピュータとの違い】
従来のコンピューター(古典コンピューター)は情報を「0か1」という2通りの状態で表す「ビット」を最小単位として扱っています。
これに対し量子コンピューターは、量子力学の基本性質である「0と1の両方を重ね合わせた状態」をとる「量子ビット」を使って計算します。
「0と1の両方を重ね合わせた状態」ってのがよく分かりませんよね。そもそも量子力学って何...と思いますよね。
量子力学とは平たく言うと、「原子より小さな世界の物理法則」です。このミクロな世界とマクロな世界で物理法則があまりに異なるため、一般的な物理学(古典力学)とは別の学問が必要になりました。我々が普段生活している中では直感的には理解しがたい法則がいくつも明らかになっています。
その量子力学の基本法則に「重ね合わせの原理」と呼ばれるものがあります。
重ね合わせの原理に基づけば、「0と1」という2通り、の状態を同時に表すことができ、量子コンピュータではこれが用いられています。
直感的に理解しやすいように、コインで例えて説明します。
コインがn枚置いてあるとしましょう。それぞれのコインは表か裏のどちらかを向いており、その組み合わせは2のn乗通りですよね。
この組み合わせでコンピュータはデータを表現しています。これが従来の古典コンピュータの考え方です。
一方ですべてのコインが回転している状態を想像してみてください。すべてのコインは表を向いているとも、裏を向いているとも言えない状態ですよね。回転が終わってみないとどちらを向いているかわからない状態を取ります。これは一度にすべての状態を表しているとも言えます。これが量子コンピュータの考え方です。
このように、量子コンピュータでは0と1を重ね合わせた複雑な状態を扱うことで並列処理が可能となり、0と1の二進数のどちらかしか扱えない古典コンピュータと比較して計算処理速度が早くなるのです。
【どのように応用されていくか?】
このように従来型のコンピュータでは答えの導出に膨大な時間を要する問題でも、量子コンピュータでは短い時間で解けるようになる可能性があるため、さまざまな分野での活用が期待されています。
材料開発や創薬の分野では、多様な分子の物性を量子コンピューターでシミュレーションすれば、現在のコンピューターで1年かかる計算も高瞬時に処理でき、ワクチンや治療薬を短期間で開発できるようになるでしょう。そのほか地球環境や交通状況のシミュレーションにも応用可能と考えられます。
またAIの劇的な発展を後押しするという話もあります。ディープラーニング(深層学習)に導入すれば、ニューラルネットワークの学習時間(正しい判断できるようになるまでの時間)を短縮しつつ、より正確な判断を可能にすることが期待できます。AIが高度化するだけで、人間のさまざまな仕事がAIに置き換わり、自動運転、ロボットなどの分野でも変化が生まれるはずです。
【まとめ】
従来のコンピューター(古典コンピューター)は情報を「0か1」という2通りの状態で表すのに対し、量子コンピュータは「0と1」という2通りの状態を同時に表すことができる。この性質により、量子コンピュータでは並列処理が可能となり、古典コンピュータと比較して計算処理速度が早くなる。
従来型のコンピュータでは答えの導出に膨大な時間を要する問題でも、量子コンピュータでは短い時間で解けるようになると期待される。